■2014年12月28日パンセ通信No.12 -『来年を良くする1年の振り返り方』
皆 様 へ
今年もいよいよ年の瀬を迎え、残すところあとわずかとなってきました。12月30日(火)のパンセの集いはお休みで、年初は1/6(火)からのスタ-トとなります。
なお、お知らせですが、尼僧の芳賀妙純先生が、テレビ朝日の『お坊さんバラエティぶっちゃけ寺』に出演なさいます。放送は新春1月12日(月)成人の日の夜7時~10時予定の尼僧特集だそうです。お時間許す方は、視聴してみて下さい。ひょっとすると話の流れで高野山の案内犬ゴンちゃんの話に、触れられる機会があるかもしれません。
ところで、年の瀬の“瀬”というのは、川の浅瀬、急流、難所を意味し、もともと年末の支払いに追われて、年を越せるかどうかの瀬戸際を意味することから、由来した言葉だそうです。
そうした困難な状況にいらっしゃる方もおられましょうし、また仕事納めが終わって、ほっとしていらっしゃる方もおられるかと思いますが、とにかく、何とか1年という歳月を過ごせたことに、皆さまともども、感謝を覚えることが出来ればと思います。
そしてまた年の瀬というのは、今年1年を振り返り、来年の抱負を考える時でもあります。しかし、今年1年を振り返るといっても、皆さんは、具体的にどのように振り返られるのでしょうか。
自分のこと、世界のこと、一瞬いろいろ気に掛かることが頭をよぎるのですが、そんなその場まかせの振り返り方で、はたして来年は拓けてくるのでしょうか?
さて、協和発酵(現協和発酵キリン)という会社の創業者で、初代の在家仏教協会理事長も務められた、加藤辨三郎という方がいらっしゃいます。
その方が、こうした振り返りの時に、座右の銘とされた言葉があります。それは、
『うまくいったら人のおかげ、失敗したら自分のせい』
という言葉です。抹香臭い言葉だと思われるかもしれませんが、加藤さんは、戦後復興への思いを胸に、この言葉に徹して生きることにより、協和発酵工業という会社を、発酵技術をベースにした世界的な
バイオケミカル、食品・酒造メ-カ-に育て上げられました。
一見自分の成果を誇示することを諌める、気休めの道徳的な言葉のように見受けられますが、そうではありません。主体的に自分の運命を切り拓いていくための、冷徹なまでに厳しく、自己を律する言葉です。通常の私たちの心性が、この言葉とは逆の方向に働くというのは、言うに及ばないことでしょう。特に、何かうまくいかないことがあれば、自分以外のもののせいにするのが、私たちの性分です。
しかし私たちが生きるということは、人と人との関係、人とモノとの関係の中で生きるという以外にありません。ですから、自分が良く生きたいと思えば、そのように自分に関わる人たちやモノたちに、動いてもらわねばなりません。そのために、私たちは段取りを行います。その段取りが良ければ、みんな気持ちよく動いてくれて、自分の望む状況が実現します。しかし、それを具体的に実現してくれるのは、あくまでも他の人たちやモノたちなのですね。だから、『うまく行ったら人のおかげ』というのは、当然のこととなってくるのが、お分かり頂けるでしょうか。
また、みんがうまく動いてくれなかったら、自分の段取りが悪かったのですから、『失敗したら自分のせい』というのも、当然のこととなってきます。
私たちの社会は今、ほんとうに困難な綱渡りのような状況のところに来ています。政治も当てに出来ません。「経済が良くなれば、自分の生活も良くなる」などと悠長なことを言っている場合ではなく、「自分が変わらなければ、世の中は変わらない」という状況が、来年はますます顕著になってくることでしょう。
そんな状況になって、「頼れるのは自分しかない」などという、最も当てにならない“自分”を頼る愚かさに陥るのではなく、『うまくいったら人のおかげ、失敗したら自分のせい』という自分と人との捉え方が出来るようになることは、すこぶる重要なこととなってくるでしょう。
しかしこの言葉に生きるということは、本当に難しいことです。加藤辨三郎さんのように、研鑽を積んだ人しかこの言葉に生きられず、この言葉に生きること自体が、ある種の修行となってきます。でも、せめて1年に1度、年の瀬だけでも、この言葉に沿って自分自身を振り返って反省し、人やモノや自然に感謝してみてはいかがでしょうか。
来年も、今年よりは少し良く生きられるように、1人1人のいのちを生かしあっていける術(すべ)を、考えていければと思っております。
良いお年をお迎えください。
皆 様 へ
今年もいよいよ年の瀬を迎え、残すところあとわずかとなってきました。12月30日(火)のパンセの集いはお休みで、年初は1/6(火)からのスタ-トとなります。
なお、お知らせですが、尼僧の芳賀妙純先生が、テレビ朝日の『お坊さんバラエティぶっちゃけ寺』に出演なさいます。放送は新春1月12日(月)成人の日の夜7時~10時予定の尼僧特集だそうです。お時間許す方は、視聴してみて下さい。ひょっとすると話の流れで高野山の案内犬ゴンちゃんの話に、触れられる機会があるかもしれません。
ところで、年の瀬の“瀬”というのは、川の浅瀬、急流、難所を意味し、もともと年末の支払いに追われて、年を越せるかどうかの瀬戸際を意味することから、由来した言葉だそうです。
そうした困難な状況にいらっしゃる方もおられましょうし、また仕事納めが終わって、ほっとしていらっしゃる方もおられるかと思いますが、とにかく、何とか1年という歳月を過ごせたことに、皆さまともども、感謝を覚えることが出来ればと思います。
そしてまた年の瀬というのは、今年1年を振り返り、来年の抱負を考える時でもあります。しかし、今年1年を振り返るといっても、皆さんは、具体的にどのように振り返られるのでしょうか。
自分のこと、世界のこと、一瞬いろいろ気に掛かることが頭をよぎるのですが、そんなその場まかせの振り返り方で、はたして来年は拓けてくるのでしょうか?
さて、協和発酵(現協和発酵キリン)という会社の創業者で、初代の在家仏教協会理事長も務められた、加藤辨三郎という方がいらっしゃいます。
その方が、こうした振り返りの時に、座右の銘とされた言葉があります。それは、
『うまくいったら人のおかげ、失敗したら自分のせい』
という言葉です。抹香臭い言葉だと思われるかもしれませんが、加藤さんは、戦後復興への思いを胸に、この言葉に徹して生きることにより、協和発酵工業という会社を、発酵技術をベースにした世界的な
バイオケミカル、食品・酒造メ-カ-に育て上げられました。
一見自分の成果を誇示することを諌める、気休めの道徳的な言葉のように見受けられますが、そうではありません。主体的に自分の運命を切り拓いていくための、冷徹なまでに厳しく、自己を律する言葉です。通常の私たちの心性が、この言葉とは逆の方向に働くというのは、言うに及ばないことでしょう。特に、何かうまくいかないことがあれば、自分以外のもののせいにするのが、私たちの性分です。
しかし私たちが生きるということは、人と人との関係、人とモノとの関係の中で生きるという以外にありません。ですから、自分が良く生きたいと思えば、そのように自分に関わる人たちやモノたちに、動いてもらわねばなりません。そのために、私たちは段取りを行います。その段取りが良ければ、みんな気持ちよく動いてくれて、自分の望む状況が実現します。しかし、それを具体的に実現してくれるのは、あくまでも他の人たちやモノたちなのですね。だから、『うまく行ったら人のおかげ』というのは、当然のこととなってくるのが、お分かり頂けるでしょうか。
また、みんがうまく動いてくれなかったら、自分の段取りが悪かったのですから、『失敗したら自分のせい』というのも、当然のこととなってきます。
私たちの社会は今、ほんとうに困難な綱渡りのような状況のところに来ています。政治も当てに出来ません。「経済が良くなれば、自分の生活も良くなる」などと悠長なことを言っている場合ではなく、「自分が変わらなければ、世の中は変わらない」という状況が、来年はますます顕著になってくることでしょう。
そんな状況になって、「頼れるのは自分しかない」などという、最も当てにならない“自分”を頼る愚かさに陥るのではなく、『うまくいったら人のおかげ、失敗したら自分のせい』という自分と人との捉え方が出来るようになることは、すこぶる重要なこととなってくるでしょう。
しかしこの言葉に生きるということは、本当に難しいことです。加藤辨三郎さんのように、研鑽を積んだ人しかこの言葉に生きられず、この言葉に生きること自体が、ある種の修行となってきます。でも、せめて1年に1度、年の瀬だけでも、この言葉に沿って自分自身を振り返って反省し、人やモノや自然に感謝してみてはいかがでしょうか。
来年も、今年よりは少し良く生きられるように、1人1人のいのちを生かしあっていける術(すべ)を、考えていければと思っております。
良いお年をお迎えください。