ゴンと高野山体験プロジェクト〜

パンセ通信No.35『見えないものへの道案内-ゴンの法要コンサ-ト』

Jun 07 - 2015

パンセ通信No.35『見えないものへの道案内-ゴンの法要コンサ-ト』 ■2015年6月7日 パンセ通信No.35『見えないものへの道案内-ゴンの法要コンサ-ト』

皆 様 へ

『生きている時ゴンは、私たちを見えない希望へと案内してくれた。そして姿の見えなくなった今、ゴンは一層大きくなって、今度は私たちを見える希望へと案内してくれている。』

高野山の麓、和歌山県九度山町の慈尊院で開催された6月5日のゴンの法要コンサ-トに、東京から7名で参加してきました。たくさんのことを示され、またゴンや他の人たちから教えられてきました。今度のパンセ集いは、そのゴンから頂いたものを、皆で分かちあえるひと時に出来ればと思います。6月9日の火曜日16時から、表参道のフィルムクレッセントで行います。

ゴンちゃんありがとうコンサ-トは、高野町の平野嘉也町長にもご来席頂いて、雨の中約100名の出席者を迎えて開催されました。凡人である私などは、なんとか雨が上がるようにと祈っていたのですが、ゴンちゃんの案内はいつも、私たちの思いを越えた先まで至ります。雨のために拝堂で行われた法要とコンサ-トは、お大師様とご母公様に見守られながら、私たちがゴンの思いを分かち合い、ゴンの心を伝えていこうとするにあたって、はるかに大きな成果を得ることが出来たように感じます。100名もの人が集うには、拝堂は十分な広さではありません。しかし子供たちは最前列のさらにその前の床に座り込み、入りきれない人は外に設営されたテントで、ゴンちゃんを思って心を一つにすることができました。出席者は私たちのように遠方から来た者もありますが、多くの人はゴンちゃんを直接知る近隣の人たちで、その遺徳を偲んでの参加であり、またゴンちゃんを親御さんたち等から伝え聞く子供たちです。安念清邦ご住職がご挨拶で語られたように、この日の雨は、けっしてゴンちゃんの涙雨などではなく、多くの人がゴンちゃんを思って集う、まさにその心に対するゴンちゃんの喜びのうれし涙であると思わされました。

それではこうして集う私たちに喜ぶゴンちゃんが、今も私たちに語り伝えようとしているものはいったい何なのでしょうか。1つにはゴンが、私たちを励まして案内しながら、私たちの普段の目には見えない、尊いいのちの価値があることを指し示したいと思っていることでしょう。それはお大師様の御心であり、また宇宙のいのちの根源である大日如来様(神様)の御心といって過言のないものです。そしてもう1つは、ゴンに案内された私たちが、ゴンの心を受け継いで、今度は自分たちがゴンに倣って案内する者となっていくことです。13(14)回忌を迎えて、この世の姿としては見なくなったゴンは、今さらに力を増して、時空を解き放たれて多くの人々を導こうとしているように感じます。亡くなった人を弔う心が、亡くなった人の意志を受け継いで、弔う人の心にさらに大きく開花するようなものでしょう。この世での案内を終えて13年、ゴンが案内しようとしたいのちの希望は、今さらにはっきりと、そしてさらに多くの人の心に捉えられ、大きく育まれようとしています。そのゴンが語り伝えようとしているものを分かち合い、さらに多くの人に伝えようとするのがこの度の『ゴンちゃんありがとうコンサ-ト』の目的でした。そして、ゴンちゃんの喜びの涙が雨となって降り注ぐコンサートは、まさにその目的をみごとに達成したものと感じることが出来ました。今回のコンサ-トを企画し、実施されたFM大阪ヒュ-マンネットの濃添社長やバンディ石田さん、歌手の妙佳さん、そして今回司会を務めて下さったTARAさんに、深く感謝の意を表したいと思います。

ところで今回のこのすばらしいゴンちゃんのコンサートは、どのように企画され、またなぜ私たちが東京から参加することとなったのでしょうか。勝手な想像をさせて頂くなら、昨年高野山ご開創1200年の準備等で、ゴンちゃんの13回忌法要を十分に営んであげられなかった、慈尊院の安念清邦ご住職や邦賢副住職の、せめて今年に満13回忌の法要を営んであげたいというお気持ちと、ゴンの歌をつくったFM大阪ヒュ-マンネットの濃添社長やバンディ石田さんの思いが1つに合わさって、実現したものと思われます。

それでは私たちは、なぜ東京から参加したのか。バンディ石田さんから、6月5日に『ゴンちゃんありがとうコンサ-ト』があることをお聞きした時、私の脳裏には、町石道を歩く人々を励まし案内したゴンちゃんの姿が浮かんできました。もしはるばる東京から、ゴンちゃんへの思いを抱く何人かが参加したなら、バンディさんや妙佳さんたちをどれほど励ますことになるか。また慈尊院のご住職や副住職、そしてゴンを知る地元の人たちの弔う心に、さらに寄り添うことが出来るのではないか。幸い、少し節約して蓄えたお金も備えられ、資金的にも参加は可能でした。この時すでに、見えないゴンがしっかりと私たちに寄り添い、ゴンの心に添って案内してくれたのだと思います。そしてゴンの案内は、この時も私たちの思いを越えて、さらにその先まで導いてくれました。誰よりもゴンへの思いの強いフィルムクレッセントの相澤社長の配慮で、交通費は会社で負担して頂けることになりました。相澤社長も、楽しみに参加したいと思っていたのですが、あいにく病状が悪化し叶いませんでした。しかしそれも、無理を強いないようにというゴンちゃんの配慮があったものと感じられます。また、東京から九度山の慈尊院でのイベントに参加するにあたり、様々な不安や煩いがあったのですが、ゴンはそんな思いを越えて結果を整え、また参加したメンバ-が、それぞれに自分の課題をそれなりに満たすことができるという、大きな成果を得ることも出来ました。それに加えて、同じくゴンへの思いを1つにする群馬県伊勢崎近郊にお住まいの尼僧の芳賀妙純さんや西村翠祥さんとも行動を共にし、翌日の高野山参詣もご一緒させて頂き、ゴンへの思いを分かつことが出来ました。このことも、私どもの想定を越えた、ゴンの導きかと感謝しております。

さて『ゴンちゃんありがとうコンサ-ト』の演目は、ゴンちゃんの満13回忌にあたる年忌法要からスタ-ト致しました。拝堂の中という絶好のしつらえの中で、安念清邦ご住職と邦賢副住職によるすばらしいお声での読経が唱和し、私たちを見えない御仏のいのちへと誘い、ゴンちゃんへの私たちの供養の心を育んで下さいました。

続いて信木俊介さんが描かれ、このほど妙佳さんが文章をお付けになったゴンちゃんの紙芝居が、妙佳さんによって披露され、ゴンちゃんに奉げられました。信木さんの絵は本当に味わい深く、ゴンちゃんに対する慈しみが深く伝わってきます。幸いにして今回、信木さんご夫妻と親しくお話しさせて頂く機会を得ることが出来ました。この絵はなんと、3年近くもの歳月をかけて、このゴンちゃんにまつわる一連のエピソ-ドとして描きあげられたものだそうです。発端は、俊介さんが脳梗塞で倒れられたことだったそうです。その麻痺した体のリハビリを兼ねて、安念ご住職の勧めもあって、ゴンちゃんの絵を描き始められたそうです。そうして奥様に支えられて、ゴンちゃんの絵を描き続けるうちに、だんだんと身体の機能が回復し、今ではすっかりとお元気になられたご様子でした。信木さんのお話を伺うにつれて考えさせられることは、信木さんを思ってのご住職の慈愛に満ちた深いご配慮と、そしてここでもまた、見えないゴンによるいのちの立ち還りに向けた案内があったと思わされることです。ゴンの思い出がなければ、信木さんの絵を描こうという思いも起こされてこなかったでしょうし、ご住職の信木さんへのお心使いも、もっと遠回りした手段でしか現すことができなかったことでしょう。ご住職の慈しみを通じて、やっぱりゴンは信木さんに寄り添い、励まし、いのちの立ち直りへと案内してくれていったのです。

その後のコンサ-トの演目は、バンディ石田さんと妙佳さんが聞き出し役になっての、安念ご住職と息子さんである邦賢副住職による『ゴンの思い出ばなし』です。ご住職のゴンちゃんの思い出は、ゴンちゃんと心を通わせるようになった経緯や、ゴンちゃんへの愛情、そしてゴンちゃんから教えられた数々のことでした。ご住職の心の中では、ゴンはもうすっかり如来様の域に達しているようでした。ゴンちゃんは今、高い石造りの台座の上で、お大師様にお仕えする姿で石像となっています。そして今もその高い所から、私たちを教え諭してくれているのだと、ご住職はお話しされていました。心が清く豊かな人は、過去の記憶や亡くなった方の思い出を、美しく浄化し純化していくと言われています。ご住職のゴンちゃんの思い出は、すでにゴンの最も美しい、大切な役割の面に純化されてきているようで、ゴンの尊さとご住職の心の豊さを深く感じさせて頂けるひと時となりました。邦賢副住職からは、車に乗るのが好きで、ワゴン車の荷台に飛び乗ってくるゴンの姿や、ウナギが好物で、ウナギを食べて白内障を治したりした、私たちと一緒にこの世界を生きて、現実に血肉を通わせたゴンちゃんの姿をお聞かせ頂けました。そして晩年のゴンに寄り添い、思い残すことなく精一杯介護をやりきった思い出などもお聞かせ頂けました。得てして人間の醜さが出てしまう介護の現実において、しかし介護がまた私たちのいのちの養いに果たす役割について、副住職から深く教えられたような気が致しました。

そしていよいよ最後が、この日にあわせてCD化された、高野山の案内犬ゴンちゃんの歌の奉納とコンサ-トです。TARAさんの司会、妙佳さんの歌とバンディ石田さんの伴奏により、さすがプロだと思わせる巧みな進行と演出によって会場は盛り上がり、会場全体によるゴンの歌の大合唱も含めて、子供たちも喜ぶとても楽しいひと時となりました。そして何よりも強く気づかされたことは、今やバンディさんや妙佳さんやTARAさんたちが、ゴンの心を受け継いで、ゴンの心を分かち合って広く伝えるための“案内者”になっているということでした。

濃添社長やバンディさんたちも、始めは高野山ご開創1200年にあわせて、ゴンの歌をつくってCD化し、話題をつくって一儲けしよういう動機から、ゴンに関わったのかもしれません。私たちの映画づくりも同じです。しかしゴンの物語に触れるうちに、ゴンはそんな私たちの心を魅了し、やさしい気持ちを引き出し、そしていのちの尊さ知ってそれを育み合う価値へと気づかせていってくれます。それがゴンのすごいところです。そして今度はそうして導かれた私たちが、ゴンの心を受けついで、いのちの価値を伝える喜びに生きる者へと変えられ、他の人のいのちの案内を担う者へと導いていかれることです。

このようにゴンちゃんの法要を兼ねた第1回のゴンちゃんありがとうコンサ-トは、見事にその目的を果たし、ゴンの心を分かち、伝え、広める起点になったように思います。本当に、見えないゴンちゃんの導きと配慮に感謝したいと思います。いのちの価値を指し示し、私たちもその案内者となっていける心の豊かさを育むために、次回のパンセの集いも持つことが出来ればと思っております。6月9日の火曜日16時からです。お時間許す方は、ご参加頂ければ幸いです。

P.S. 6月5日のゴンちゃん有難うゴンサ-トの状況は、今回参加して下さったカメラマンの佐野哲郎さんが、フィルムに収めて下さいました。本当に有難く、感謝申し上げます。折を見てみなさんにも、見て頂く機会をご提供出来ればと思っております。